冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~

 それにこの機に乗じて、アシュレはうまくシルビアも
 王宮から退けていた。

 ウインギュスターの家名が地に落ちかけているのだ、
 もう側妃になろうなどと野心をもつことはあるまい。



   「今回のことは、私とウインギュスター卿の仲に嫉妬した
    皇帝陛下がウインギュスター卿を殺し、それを知って
    シルビア様は西の領に帰ってしまったのだと噂しているものが
    あるとききます。
    皇帝陛下の名に傷がつくことは、、、。」

   「言いたい奴には、言わせておけばよい。」

   「しかし、、、。」



 リューリは顔をゆがませた。

 アシュレは何も悪くないのだ。



   「私は権力を手にするために、父親を殺した男だぞ、
    妃の恋人に嫉妬して、殺すぐらいのことはするだろうさ。」

   「ウインギュスター卿は、私の恋人ではありません。」

   「本当にそうだろうか、、、。」



 非難する口調ではなかったが、アシュレの口から呟くように
 漏れた言葉には、切ない響きがあった。

 リューリははっと顔をあげる。

 じっとリューリを見つめるアシュレと目があった。

 アシュレの瞳は熱を孕んでいてそらすことができない。



   「リューリの心はダニエルのものになったのだと
    そう思っていた、、、。」



 アシュレもリューリから目をそらさない。



  
< 138 / 159 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop