冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
北の領のミッツの街は美しいところだった。
四方を山で囲まれ、どこもかしこも雪景色で、
それが日のひかりにきらきらと輝いている。
山荘は予想外にこじんまりとしていて、管理人の夫婦がいるだけ。
絶えず何人かにかしづかれている生活にリューリはまだまだ馴染めないで
いたから、この家庭的な雰囲気はリューリを喜ばせた。
外で火をおこし、肉をあぶって食べたりもした。
食材を準備したのは管理人の夫婦だが、料理はアシュレと二人でした。
意外とアシュレは慣れていて、見事な包丁さばきで肉を切り分ける。
「野外の食事は慣れてると言っただろう。」
肉を切り分けながらそんなことを言う。
そう言えば、戦争中は第一線で戦っていたのだと言っていた。
アシュレは戦争の悲惨さを身を以て知っているからこそ、
戦争を早く終結したかったのだと、今ならわかる。
その戦争終結のための政略結婚だったのに、今、アシュレはとても
やさしい。
リューリは幸せを感じていた。