冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
ミッツの冬祭りがおこなわれる日は、あいにくの曇り空だった。
「これに着替えて。」
階下に降りてきたリューリにアシュレが服をわたした。
そういえばアシュレも普段より質素な服を身につけている。
「皇帝と皇妃だとばれるわけにはいかない、貧乏な地方領主の
カップルだと思わせたいんだ。
その方が、祭りを楽しめる。」
溜め池のスケート場を中心に、まつりの広場がつくられていて、
さまざまな屋台が立ち並んでいる。
まだ子供のころに、オニギスの北の離宮の使用人に、祭りに連れて行って
もらって以来だったから、リューリは目を輝かせて、いろんな屋台を
みてまわった。
「おいおい、すべての屋台の食べ物を食べつくすつもりかい?」
そう言ってアシュレにからかわれるくらい、リューリは食べ歩きを
楽しんだ。
ミッツの山で捕らえた猪肉のあぶり焼きは絶品だった。
「けものの肉なのに臭くありませんわ。」
「料理の仕方が違うのかもな。」
「リューリ。」
「はい?」