冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~

 アシュレはなかなか戻ってこなかった。

 リューリはかじかむ手にはぁと息を吹きかけ擦りあわせる。

 目の前では人が行き交い、会場の片付けをはじめている。

 スケート場もおしまいになったらしく、貸靴屋も店じまいをはじめた。

 リューリは立ち上がり、アシュレを探しに歩きはじめた。

 救護テントは本部テントのそばにあったはず。

 まだ片付けられていない屋台の角を曲がったところで、リューリは
 アシュレと先程の娘が一緒にいるところを見つけた。



   「アシュ、、。」



 名前を呼びかけようとして、リューリは口を噤んだ。

 二人の体が寄り添っていて、顔が近づいて、キスしているように
 見えたからだ。

 リューリは後ずさった。



   「きゃあ。」

   「あぶねーな。」



 後ずさったところを、荷物を運ぶ人とぶつかりそうになり
 声がでた。

 その声をきいてアシュレがこちらを向く。



   「リューリ!」



 瞬間、視線が合った気がした。

 だがリューリはくるりっと後ろを振り向くと逃げ出した。
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