冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~

 (陛下が見ず知らずの娘と、、、そんな嘘よ!)


 そう思うが、足はとまらない。


  (私のことが好きなんじゃなかったの?)


 そういえば、好きだとは一言も言われてない。


  (私、ばかだわ、やさしくされて舞い上がって)


 これでは、ダニエルの時と同じじゃあないか。


  (もう、騙されるのはたくさん)



   「リューリ!待つんだ。」



 アシュレの声が聞こえるが、リューリは止まらなかった。

 会場をぬけ、裏の林の中に逃げ込む。


  (私、きっと酷い顔をしている。こんなに苦しいのはいや、
   まるで、嫉妬しているみたい、、、)


 そう考えて、リューリははっとした。


  (嫉妬、、、私が、、、)



   「リューリ!」



 間近で、アシュレの声がした。

 はっと振り返った瞬間、リューリは足下がぐらりと崩れるのを
 感じた。



   「きゃあ。」



 雪でわからなくなっていたが、知らぬ間に崖の縁まで来ていたらしい。

 落ちる雪とともに、リューリの体は崖下へ落ちていった。
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