冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~

 突き放され、捨て置かれ、だけど時々見せるアシュレのやさしさに
 いつの間にか、リューリは惹かれていたのだ。

 そのことを自覚し、心に暖かいものが溢れるとともに、リューリは
 この静かな場所に二人きりなことが急に恥ずかしくなった。

 ちらりととなりのアシュレを伺うが、アシュレは静かに炎を見つめている
 だけで何を考えているかはわからない。



 小屋の回りを吹き荒れる吹雪の音がひびき、戸ががたがたと揺すられる
 音と薪のはぜる音がするだけで、室内は静かだった。

 自分の心臓の音がいやに大きく聞こえる。
 
 となりのアシュレにも聞こえてしまうのではないかと思い、リューリは
 ぎゅっと目をつぶった。



   「今日が何の日か、わかっていたか?」



 唐突にアシュレに問いかけられて、リューリは目をひらいた。



   「今日、、、。」

   「そう、今日はそなたがこのクルセルトに来た日だ。
    ちょうど一年前、俺はオニギスから姫を迎えることになった。
    どんな姫がやってくるのか、それがどんな女性か、
    何も知らなかった。いや、知ろうとしなかった。

    結婚は国のためだった。だから送られてきたリューリを見て
    国の威信が傷つけられたように思った。」

   「妾腹の娘だということを気にしてお見えでした。」

   「ああ、心ない言葉でリューリを傷つけたのを憶えている。

    すまなかった、、、、許してほしい。」

   「陛下。」
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