冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
オニギス公国は小さいとはいえ、古く歴史のある国。
それに対して、クルセルト国は何度も支配者が変わり、
今のクルセルト国として成り立ったのは、ほんの八十年ほど前だ。
戦いはオニギス公国に利があり、苦もなく決着がつくかに思われた。
ところが思いのほか、クルセルト国は粘り強く、
決着がつかぬまま、泥沼化し、戦いをながびかせた。
そんな中、クルセルト国の皇帝が、その息子である王子に討ち取られた
という噂がひろまり、
この好機にとオニギスが国力をあげ戦いにのぞんだのが、一年前。
だが、神はオニギスに味方しなかった。
戦いは、クルセルトが優位に立ったまま続き、オニギスの民は疲弊した。
そしてほんの二ヶ月前、クルセルト側から戦争の終結を申し込まれ、
オニギスは悔恨をのこしながらも、これに同意。
両国間に和平条約がむすばれた。
そしてその証に、オニギスより姫がクルセルトに輿入れする。
輿入れとは名ばかり。
体のいい人質だ。
(もっとも、私に人質の価値があるかどうかは、わからないけれど)
リューリはそう胸の内で呟く。
馬車は王都をぬけ、間近に城門が迫ってきていた。
石積みの門はなんの装飾もなく、素っ気ないが
外と中を隔絶するように、大きくそびえたっている。
華麗なリレーフを掲げる、祖国の城門とは大違いだ。
その事が、これから向かう先のすべての事を現しているような気がして
リューリは身震いをした。