冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
だが、何も起きない。
リューリを襲うどころかアシュレは、リューリをおろした格好のまま
ぴくりとも動かない。
どうしたのかと、リューリがアシュレの方を見れば、
アシュレは口元を押さえたかと思うと、足早にテラスにむかい
カーテンも戸も乱暴に開けて、外へ出て行ってしまった。
(何があったんだろう)
急に具合でも悪くなったんだろうか。
心配になったリューリは寝台をおり、アシュレの後を追った。
アシュレは、テラスの隅の植木鉢がならんだ棚に手をついて
肩をふるわせている。
「陛下、、、どうなされたのですか?もしかして御気分でも、、」
そう言って、リューリが後ろからアシュレを覗き込む。
これは、、、どう見ても、、、。
(笑ってる?)
アシュレは、必死になって笑いを堪えようとしているのだった。
だけど、堪えきれずにいる。
しばらくして笑いをおさめたアシュレは、体をのばすと
何事もなかったかのように部屋へ戻ろうとした。
「あの、皇帝陛下?」
「なんだ。」
「何がそんなに可笑しゅうございましたか?」
「何のことだ。」
そう言って、リューリを見る目は、もうなんお感情も宿していない
かのような冷めた目だ。