冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~

   「ふん、くだらない。
    あいつは交易路を開くための大事な駒だ。
    さっさとお妃教育を終わらせて、外交にでてもらわねば
    ならない。」



 そう言い捨てると、アシュレは席を立った。



   「そうですね、もう少ししたら、外交にでてもらいましょうか。
    こればっかりは、机の上で学ぶというわけに
    はいきませんからね。」



 窓辺にむかったアシュレの背中にむけて、イーノックが言った。


  (そうだ、そうでなければ、このくだらない婚姻の意味が
   無くなってしまう)


 窓辺に立ち、アシュレは窓の外をみている。

 執務室の窓からは、見事に咲き誇る中庭のバラの生け垣が
 見えるが、アシュレはそんなものを見てはいなかった。
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