冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~

   「確かに、前皇帝の時代には、庭の東屋も金や銀、その他
    宝玉でかざられておりましたよ。」

   「そう、、、。」

   「でも、アシュレ様が皇帝になられたとたん、そういったものは全部
    とりはずして、売っぱらっちまったんです。」

   「まあ、強欲なのね。」



 そう答えたリューリに対して、庭師のギイロは慌てて手をふった。



   「いえいえ、そうじゃありません。
    アシュレ様は宝玉を売っぱらってできたお金で、クルセルトの民
    が、飢えないように食糧を買い与えてくださったんで。」

   「そうだったの。」

   「長い戦争で、作物を育てる人手が足りず、
    民はいつも飢えていましたから。」



 そう言って、ギイロは遠くを見る。

 戦争で傷ついたのは、オニギスの民ばかりではないのだ。

 ここ、クルセルトの民も同じ。



 ともすればリューリは、オニギスの民を苦しめたのは、クルセルト
 だと思ってしまいがちだったけれど、立場をかえてみれば
 どちらも同じなのだ、とわかる。



   「アシュレ様が、戦争を終わらせて下さったんですよ。
    あのまま前皇帝が生きていたら、きっとまだ
    戦は終わっていなかった。」



 ギイロの言葉を聞きながら、リューリはアシュレの顔を思い浮かべた。

 でも、思い浮かぶのは、冷たい目をした、無表情のアシュレばかり。
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