冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~

 アシュレが執務室から、住まいのある東の宮へ行くのに
 中庭の回廊を通ろうと思ったのは、ただの思いつきだった。

 リューリが庭仕事をしている、、、そう聞いていた事が
 心の片隅にあったからかもしれない。


 回廊を真ん中まで来たところで、女が木に立てかけたはしごに
 よじ上っているのを見た。

 使用人の娘が、なにか木にひっかけでもして、登っているのだろう
 と思って、通り過ぎようとしたところで、
 その娘の、(使用人にしては見事な)淡い金色の豊かな髪が見えた。


  (あの髪は、、、)


 アシュレは足を止めた。



   「リューリイム!」



 そう、アシュレが叫び、その声にびっくりしたリューリが
 後ろをふりむいた。

 だが、うしろを振り向いたせいで、はしごのたてかけがはずれた。



   「あ、あ、きゃあ!」



 落ちる、、、リューリはそう思ったが、ひどくバランスを
 くずした体はもとには戻らない。

 地面におちれば、相当いたいはず、、、
 目をつぶり、体を丸めたが、少しも痛みはおそってこない。

 どさりと、地面とは違う、やわらかくしなやかなもので
 体が受け止められたのをリューリは感じた。



 目をあけると黒髪が身の前にあって、抱きしめられているのだと
 わかる。



 
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