冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
「リューリ様、だいじょうぶでございますか?」
「ええ、まさか
着いた翌日に夜会だとは思わなかったけれど」
数人の女官がリューリの身支度を終え、去っていったのをみて
エルダがそっと、リューリの手をにぎった。
だいじょうぶだと答えたものの、三日にわたる長い馬車の旅のあとだ。
体の節々が、まだ痛くてしょうがない。
それなのにギュウギュウにコルセットをひきしぼられ、
髪もきっちりと結いあげられて。
その上、これから衆人の目の元にさらされに行くのかと思うと
ため息がでる。
おまけに、昨日の夕方に城についてから、今にいたるまで
皇帝陛下にはお目にかかっていない。
今晩、逢う事になるのだろうけど
自分がどこにいて、どう振る舞えばよいか、見当もつかないだけに
大勢の目がある中での初めての謁見は、気がおもかった。
何度目になるかわからないため息をそっと吐いたところで
コンコンと部屋の扉がノックされた。