冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~

   「え、あ、きゃあ。」

   「うるさい。」



 そういわれて、あらためて黒髪を見直すと、アシュレだった。



   「皇帝陛下!」
  
   「だから。うるさいと言っている。」



 そういって、抱く力をゆるめ、リューリの顔をのぞきこんだ
 アシュレの目は、いつもの冷たい目ではなかった。

 リューリの顔をのぞきこみ、体をたしかめ、ケガがなかったかを
 見ている。

 あまりに近いアシュレとの距離にリューリは頬があかくなるのを
 感じた。



 ケガがなかったのを確かめると、ふーっと息をはいたアシュレは
 リューリの腕をぐいっと引っ張って歩きはじめた。



   「あ、あの、皇帝陛下!」



 リューリが叫んでも、アシュレの歩くスピードは弱まらない。

 
 そのまま、アシュレの部屋までつれていかれて
 やっとアシュレはリューリの腕をはなした。




< 30 / 159 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop