冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~

 不思議だった、あんなに恐れ、恐いと思っていたのに、
 今日のアシュレ様は、こわくない。

 冷たく拒絶するようなアシュレでもなく、にこやかに笑みをふりまく
 アシュレでもない。

 今まで見たことのないアシュレが、今、此処にいて、自分のとなりで
 お茶を飲んでいる。


 不思議とこの関係が居心地良く感じる。



   「さて、もう政務のもどらねばならない。」



 アシュレが立ち上がり、リューリの感じていた、穏やかな空気は
 シャボン玉がはじけたように、無くなってしまった。



 部屋をでていこうとするアシュレにリューリは慌てて声をかけた。



   「あ、ありがとうございました。」



 アシュレはちらりとリューリを見たが、無言で部屋を出て行った。


 でも、出て行くときのその顔に、一瞬、やわらかい笑みがうかんだように
 リューリは思った。

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