冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
オニギスに向けて発つのは三日後だ。
あんなに帰りたいと思っていた祖国なのに、リューリは気持ちが沈んで
しかたなかった。
里帰りなどしても、王宮にはだれも喜ぶような人はいない。
北の離宮に行ければいいけど、主人をなくして、北の離宮は
閉められ、使用人もちりぢりになってしまったに違いない。
それに、、、とリューリは思う。
アッカースン侯爵の相手なんて自分につとまるのかしら。
それも、相手の目を欺かなければならない。
どれもこれも自分には無理な気がする。
明日、お茶会を開いて、もう一度陛下とお話しよう。
そうすれば、少しは気持ちがおさまるかもしれない。
はしごから落ちた後、一緒にお茶を飲んでから、リューリは
アシュレと二人きりのお茶の時間を持つようになっていた。
助けていただいたお礼にと、刺繍したハンカチを渡したくて、
お茶によんだところ、アシュレはそれに応じてくれた。
それ以来、本当に時々だが、リューリがお茶を整えて、
アシュレを呼ぶ。
もちろん、アシュレには忙しいと断られる事の方が多く、
時間も三十分に、満たないようなささやかなものだったが
リューリは満足していた。