冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
しかし、次の日も、その次の日も、アシュレは西の領主の
屋敷にでかけていて、リューリのお茶会は実現しなかった。
腹をくくるしかない、そう思うが、不安は胸の内から去ってはくれない。
アシュレに逢ったところで、不安をふきとばすような言葉を
かけてくれる訳ではない、、とわかっているのに、無性にアシュレに逢いたい。
でも、アシュレはいない。
朝、起きてから何をするにも、重い気分がまとわりついてはなれないリューリは
いやな気分を吹き飛ばすために、剣術の練習をすることにした。
服を着替え、長い髪をひとつにくくると、城内の騎士の練習場へと
足をむける。
練習場までは、かなりの距離がある。
本当は、衛兵と一緒に、中庭の回廊から、東の回廊をぬけ、
ぐるりとまわっていかなければならないのだが、リューリは
衛兵に頼まず、自分で見つけた近道を行くことにした。
中庭を突っ切り、東の回廊を半分行ったところで、建物伝いに
歩き、騎士の詰め所を横切っていくのだ。
誰もいないのを確認し、騎士の詰め所を走って横切ろうとした時
向こうからやってくる、近衛騎士の一団がみえた。
リューリは慌てて、近くの茂みに身を隠す。
どうやら、アシュレと共に、西の領へ行っていた者たちのようだった。