冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~

 しかし、次の日も、その次の日も、アシュレは西の領主の
 屋敷にでかけていて、リューリのお茶会は実現しなかった。

 

 腹をくくるしかない、そう思うが、不安は胸の内から去ってはくれない。

 アシュレに逢ったところで、不安をふきとばすような言葉を
 かけてくれる訳ではない、、とわかっているのに、無性にアシュレに逢いたい。

 でも、アシュレはいない。

 
 
 朝、起きてから何をするにも、重い気分がまとわりついてはなれないリューリは

 いやな気分を吹き飛ばすために、剣術の練習をすることにした。

 服を着替え、長い髪をひとつにくくると、城内の騎士の練習場へと
 足をむける。

 

 練習場までは、かなりの距離がある。

 本当は、衛兵と一緒に、中庭の回廊から、東の回廊をぬけ、
 ぐるりとまわっていかなければならないのだが、リューリは
 衛兵に頼まず、自分で見つけた近道を行くことにした。

 中庭を突っ切り、東の回廊を半分行ったところで、建物伝いに
 歩き、騎士の詰め所を横切っていくのだ。


 誰もいないのを確認し、騎士の詰め所を走って横切ろうとした時
 向こうからやってくる、近衛騎士の一団がみえた。

 

 リューリは慌てて、近くの茂みに身を隠す。

 どうやら、アシュレと共に、西の領へ行っていた者たちのようだった。


< 37 / 159 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop