冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~

 

 西の領のシルビア=ウインギュスター、、、
 
 名前も知っているし、お茶会で逢ったこともある。

 確かに、すばらしく目を引く美人で、大輪のバラを思わせる
 ような人だ。


  (その人とアシュレ様が、、、)


 二人で立ち並べば、これほどお似合いのカップルはないだろう。


 それに何と言っていたか、、、。
 来週も西の領へ行くのだと言っていなかったか、、、。


  (私をオニギスへ送り出したあと、逢いに行くのだわ)


 妻には短剣を持たせ敵国の視察へ、自分は愛人のもとへ、、、。



 ” なにもお前との間に、世継ぎをもうける必要はない ”

 忘れていた言葉がよみがえる。


 八ヶ月が過ぎても、リューリは無垢なままだった。


 結ばれることを望んでいるわけではない。

 それなのに何故、こんなにも胸の内に苦い固まりが
 詰まっていくのだろう。




 次の日、リューリは、オニギスへむけてイーノックらと
 共に、旅立った。

 見送りにでたアシュレを、リューリは一度も見ようとは
 しなかった。
< 39 / 159 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop