冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
西の領のシルビア=ウインギュスター、、、
名前も知っているし、お茶会で逢ったこともある。
確かに、すばらしく目を引く美人で、大輪のバラを思わせる
ような人だ。
(その人とアシュレ様が、、、)
二人で立ち並べば、これほどお似合いのカップルはないだろう。
それに何と言っていたか、、、。
来週も西の領へ行くのだと言っていなかったか、、、。
(私をオニギスへ送り出したあと、逢いに行くのだわ)
妻には短剣を持たせ敵国の視察へ、自分は愛人のもとへ、、、。
” なにもお前との間に、世継ぎをもうける必要はない ”
忘れていた言葉がよみがえる。
八ヶ月が過ぎても、リューリは無垢なままだった。
結ばれることを望んでいるわけではない。
それなのに何故、こんなにも胸の内に苦い固まりが
詰まっていくのだろう。
次の日、リューリは、オニギスへむけてイーノックらと
共に、旅立った。
見送りにでたアシュレを、リューリは一度も見ようとは
しなかった。