冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
どうぞと声をかけると、扉がひらき、みごとな金髪のハンサムな青年がいて
穏やかな笑みを浮かべ、リューリに向かって丁寧におじぎをした。
「リューリ様、初めてお目にかかります。
皇帝陛下の執務補佐官をつとめております、
イーノック=バルバリーと申します。
リューリ様を夜会の間にお連れするようにという命をうけて
まいりました。」
そう言って、イーノックと名乗った青年は、リューリの近くまでくると
そっと手をさしだした。
その手のひらにリューリはそっと手をのせると立ち上がる。
(覚悟をきめるしかないわ)
イーノックにエスコートされながら長い回廊をぬける。
「リューリ様、旅の疲れはまだお残りでしょうね。」
イーノックがやわらかい微笑みをうかべたまま
話しかけてきた。
「いえ、だいじょうぶです。」
「皇帝陛下も気にかけておいででした。
政務が忙しく、まだリューリ様のもとに足をむけてないことも。」
「ご心配にはおよびませんわ。」
(ようは、人質なんだもの。丸一日捨て置いてもかまわないと
思っているに違いないわ)
話しているうちに、大広間の扉のまえにつき
イーノックは ”では、のちほど”と言うと、リューリから
離れていった。
そして扉が開かれた