冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
真ん中にしかれた長く紅い絨毯の先に玉座があり
男がひとり座っているのが見える。
絨毯の左右には、着飾った人々が溢れていた。
リューリは背筋をぴんとのばし、一息、息を吸うと一歩をふみだした。
不躾な視線がささる。
ひそひそと囁かれる声が耳の中へ入りこむ。
玉座までが果てしない長さのように感じた。
玉座の下までたどり着き、上を見上げる。
見下ろす皇帝の視線とぶつかった。
青みがかった黒髪、そしてその瞳も、
夜の空をおもわせるような色だ。
切れ長の目には、なんの感情もうかばず、ただリューリを見下ろしている。
沈黙に堪えきれなくなったリューリが、何か言おうと口を開きかけた時、
すっと皇帝アシュレが立ち上がった。
立ち上がると、ずいぶん背が高いのだなとわかる。
リューリから目を離さず、射すくめるように見つめたまま
玉座の階段をおりたアシュレは、リューリのそばまでくると
そっとリューリの手を持ち上げ、指先に口付けをした。