冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~

   「そんな、私を庇うために、、ご自分で体に傷を
    つけられるなど、、、、。」

   「でも、そのお陰で助かりました。」

   「ですが、、、。」



 イーノックを黙らせるように、リューリはにっこりと
 笑うと言った。



   「それより貴方です。まだ顔色が悪いですわ。」

   「薬を持ってきております。それを飲めばだいじょうぶです。」

   「そうね、そしてなるべく早くここをでて、お医者様に
    看てもらいましょう。」

   「はい。」



 まだ、何か言いたげなイーノックの背中を押して、見送り
 部屋の扉をしめると、リューリはそのまま、ずるずると
 扉にもたれて、座り込んだ。


  (よかった、、、嘘はばれなかったわ)


 明日には、ここを離れることができる。アッカースン候は、ずいぶん
 ショックをうけたようだ。
 ここを発つまでに、この問題を蒸し返すようなことはないだろう。



   「あぶなかったわ。」



 リューリは声にだしてつぶやいた。

 アッカースン候はリューリを疑っていた。
 
 長居は無用だ。

 ここを離れる事はうれしかったが、それはクルセルトに帰るということになる。

 

 今になって、傷をおった腕が痛みだした。

 しかしリューリは、心の痛みよりはましなような気がした。
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