冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
(5)
「お帰りなさいませ。」
内務執官のハドリーが、満面の笑みで、出迎えてくれた。
ハドリーの後にひかえる三人の執官達も、リューリに暖かい笑みを
送ってくれる。
(帰ってきた、、、)
そう思いリューリは、ほっと安堵のため息をついた。
あんなに厭だったクルセルト城が、今では自分の家なんだと感じる。
ただ、ひとつの事を除いては、、、。
「謁見の間にて、陛下がお待ちです。」
ハドリーが告げる。
(逢わねば、、、)
リューリは先程とは、まったく違う意味のため息を落とす。
そのため息は、誰にも気づかれぬうちにリューリの足下に消えて
いったが、リューリはそのため息がいつまでも、重く足に纏わりついている
ように感じた。