冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
その人は今日も神のように凛々しく、自分の玉座に座っていた。
回りには、宰相をはじめ、幾人かの臣下が控えている。
にこやかな笑みはいつもの通り、そしてよりいっそう笑みを深くすると
言う。
「よく戻った。
オニギスでは、父上他、皆様方、変わりなかったか?」
「はい、皆、息災でございました。」
「視察の方も、滞りなくすませる事が出来た。礼を言う。」
「いえ、もったいのうございます。」
「まだ、旅の疲れもあるだろう、下がってよい。」
「はい。」
リューリはずっと膝をつき礼の姿勢をとったままだ。
本当なら、ここで顔をあげて、皇帝と目を合わせなければ
ならない。
でも、リューリは顔をおこせなかった。
動かないリューリに、宰相のウイズルが声をかける。
「どうかされましたかな。皇妃様。」
「いえ、何でもありません。それでは失礼いたします。」
顔をふせたまま言うと、リューリは深くお辞儀をし、
そのまま、謁見の間をでた。