冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~

   「陛下にお詫び申し上げました。
    リューリ様のお体に傷をつける結果になったことを。」

   「そのような事、陛下は気になさらないわ。」

   「大切な奥方の体に、傷跡が残るかもしれないのですよ。
    男は誰でもいやなものです。
    妻には、美しくいて貰いたいから。」



 リューリの顔が強ばった。
 
 イーノックは心配して言ってくれているのだ。

 それはわかるが、”妻”という言葉は、リューリの胸をざわめかせた。



   「.................。」

   「今回の事で思いました。リューリ様はお美しいだけでなく
    果敢な決断もできるお方だと。

    アシュレ様は、本当に良い方を妻にお迎えに、、。」

   「やめて!」



 気がつけば、リューリは強い声で、イーノックの言葉をさえぎっていた。



   「リューリ様?」

   「私は、、、私は妻なんかじゃないわ。」



 皇帝の愛など、一度も受けた事がない。

 私がどんな体になろうと、あの方はどうでもいいのだ。
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