冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
思いがけないアシュレの行動に、リューリの頬が紅くそまる。
そして、リューリをくるりと振り向かせ、自分も振り向くと
満面の笑みをうかべた皇帝アシュレは、凛とした声で言った。
「ここに、オニギス公国より姫をお迎えした。
今宵は歓迎の宴であるゆえ、皆もくつろぎ、多いに楽しまれよ。」
それから、リューリはアシュレの隣に立ち、たくさんの人たちの
あいさつをうけた。
ずっと指先は繋がれたままで、アシュレは切れ長の目を細め、
口元には笑みを浮かべながら、臣下より言葉をうけている。
そして臣下の言葉が、リューリにむけられると、
笑みをうかべたまま、リューリの顔をのぞきこんだ。
繋がれたままの指先がなんだか熱くて、リューリは顔の火照りが
さめないでいた。
噂では、アシュレは父を殺し、その配下の者にも容赦なく処罰を
加えたとして、冷血無情な皇帝と言われていたはずだ。
それが、こんなふうににこやかに笑って、リューリのとなりに立っている。
どんな冷たい言葉を浴びせられるか、どんな理不尽な扱いをうけるか、
と思って来たのに、、、。
丸一日、ほおっておかれたことも、痛むからだのことも忘れ、
リューリは口元をほころばせた。
胸の内にたまっていた不安が、きれいに洗い流されていく。
アシュレの笑顔は、すべての者を惹きつける。