冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~

   「なぜここに居られるのですか?」



 自分の出した声が、地の底から響くように聞こえる。

 リューリは、今しがた入った寝室の寝台の上に、アシュレの姿を
 みとめて、びっくりしていた。

 居るはずのない人が、今ここに居る。



   「ここに居ては、いけないか?」

   「そんなことはありませんが、まだ時間が早うございます。」



 リューリだって、今日はずいぶん早くに寝室に来たのだ。

 今日はいろいろありすぎて、早くひとりになりたかった。



   「イーノックに執務室を追い出されたんだ。」

   「イーノック様に?」

   「二人の時間が少なすぎると言われた。」



 リューリは顔が強ばるのを感じた。

 

 イーノックはすべて、アシュレに話したのだ。

 だから今、アシュレはここに居る。


 羞恥で顔があつくなり、体が震えるのを感じる。


  (哀れに思ったのだろうか。だからお情けをかけてくださると、、)
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