冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
確かに、皇帝の愛を一度も受けたことのない皇妃など
滑稽だ。
だが、お情けで抱かれたくはない。
しかも、他の女性を、思っているような人に。
逃げ出したい気持ちと、今ここで怒りをぶちまけてしまいたい
気持ちがせめぎ合い、リューリは唇をかんだまま俯いていたが
なにかを振り切るように、毅然と顔をあげた。
「陛下。」
「なんだ。」
「旅の疲れもまだ癒えませぬ故、しばらくの間、自分の寝室を
使っても、ようございますか。」
「ここでは、眠れぬと?」
「はい。」
「................。」
リューリの返事をきいても、アシュレは何もいわない。
いつものように、射すくめるような目でリューリを見ているだけだ。
どれくらい、二人で見合っていたのだろうか。
アシュレはふうーと息を吐くと、目を伏せ言った。
「わかった、ゆるす。」