冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~

   「ありがとうございます。」



 リューリは、アシュレに礼をいうと、部屋を出ようとくるりと
 振りかえった。

 しかし、そこで



   「まて。」



 声がして、手首をぎゅっとにぎられる。

 そのまま、ぐいっとひかれ、リューリは寝台の上に引っ張られた。

 あわてて起き上がると、アシュレの手がリューリの傷のある腕を
 持ち上げて、じっと見つめている。



   「イーノックを庇って、自分で傷をつけたのだと聞いた。」

   「はい。」

   「イーノックが褒めていた。
    とっさの判断で、そこまでできる女性はそうはいないと。」

   「..................。」

   「傷はまだ、癒えておらぬか。」

   「もうずいぶんと、良くなりました。」

   「そうか、、、。」



 そういうと、アシュレは空いている方の手の指先で、そっと
 包帯の上をなぞる。

 そのやさしい動きにリューリはぴくりっと体をふるわせた。



   「そなたの身が傷ついてもいいとは思っておらん。
    だが、よく切り抜けてくれた、礼をいう。」



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