冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
(6)
クルセルト国には宰相がいるが、それはほんのおかざりにすぎない
と口さがないものは言う。
確かに実質、国政を取り仕切ったいるのは、皇帝アシュレであり、
それを補佐しているイーノックだ。
宰相のウイズルは、前皇帝の時の宰相であり、今はなんの実権も
もたない。
要するに、ヒマである。
その宰相ウイズルが、今日はめずらしく王宮内を走り回っているもの
だから、宮内のものは何事かと思い、せかせかと歩いていくウイズルを
見送った。
「やっと、やっと見つけましたぞ、陛下。」
アシュレが振り返ると、そこには宰相のウイズルが、額に玉のような
汗をうかべて立っていた。
「なにかあったか?」
「実は、陛下に内密にご相談したいことがありまして。」
「では、執務室で話を聞こう。」
「そのような場所で、お話すようなことでもなく、、、。」
「なんだ、はっきりとしないな。」
「今、少しお時間を頂けないでしょうか。」
わかったとアシュレは了承すると、側に控えていた者達を下がらせた。