冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
「それに、皇妃におかれましては、少しもご懐妊の
様子がなく、そればかりか最近は、陛下と寝室をおわけ
になっておられるとか。」
そんなことまで、古狸の貴族や王族達に知られているのかと
アシュレは苦々しく思い、顔をしかめた。
「側妃とはいえ、家柄、人柄、教養、加えて容姿の美しさ、
すべてに秀でたものでなければなりません。
選定するのも一苦労というわけで、、。」
「大変ならやめればよい。」
「陛下。」
非難をこめたウイズルの声に、アシュレはおおきなため息を
落とした。
少しは譲歩しないとこの話は終わらないだろう。
「わかった。この件は保留としよう。
こんなところで簡単にきめれる話しでもあるまい。」
「私の方で、いろいろと手を打っておきます。
前向きにご検討下さい。」
「わかった。」
「お聞きあげ下さり、ありがとうございます。」
これで解放されると、アシュレは内心ほっと息をはいた。
「うむ、それではな。」
年老いた宰相を労るように、アシュレはその背中をたたくと
その場を歩み去った。
その姿を見送りながら、ウイズルはつぶやく。
「さてさて、側妃候補にどうやって皇帝陛下のお目通り
を頂くかだが、、、まずはその根回しを。
ああ、忙しい、忙しい。」