冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
(7)
イーノックが仕事に完全復帰した。
政務の滞りが解消され、喜んだアシュレだが、
仕事の合間になにかとリューリの話題を持ち出され、煩わしいことこの上ない。
アシュレにしてみたら、自分なりに少しは気を使ってみたのだ。
だが、リューリは寝室は別にするし、顔をあわせてもぎこちない。
イーノックにやかましく言われ、寝室をもとにもどすよう命じたが、
逆らいはしなかったものの、望んではいないのだということが
見て取れた。
お互い寝台の上で触れ合っていながら、” 待て ”というのに
女に逃げられたのは、アシュレは初めてだったし、政治的思惑でも
なければ、自分から女に近づいたこともなかったから
イーノックがいうように、リューリにやさしくすることを
アシュレは早々にあきらめてしまった。
どうせ久しぶりにオニギスに帰り、里心でもついたのだろう。
クルセルトはオニギスに比べ、若い国だ。
しかも何回も支配者が変わっている。
その度に、血を血で洗うような争いがおきた。
だからなんとも歪な国だ。
伝統と伝説に彩られたオニギスのような優雅さというものがない。
リューリにしてみたらそんなところが不満なのだろう。