冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
見ほれていたリューリは、唐突にアシュレに声をかけられて
はっと、我にかえった。
「まだ長旅のあとで、疲れているだろう。ここはもういい。
部屋に帰って休まれよ。」
アシュレはリューリの顔を見ないで言う。
そしてリューリの返事を聞かぬまま、その旨を会場にいる者達に告げると
近よってきた側付きの者に、つないでいたリューリの手をわたした。
指先が離れていくとともに、あたたかな熱が逃げていくようで、
リューリは離れていったアシュレの手を目で追いかける。
「こちらでございます。」
そう言われ、リューリは広間をあとにした。