冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~

 見ほれていたリューリは、唐突にアシュレに声をかけられて
 はっと、我にかえった。



   「まだ長旅のあとで、疲れているだろう。ここはもういい。
    部屋に帰って休まれよ。」



 アシュレはリューリの顔を見ないで言う。

 そしてリューリの返事を聞かぬまま、その旨を会場にいる者達に告げると
 近よってきた側付きの者に、つないでいたリューリの手をわたした。

 

 指先が離れていくとともに、あたたかな熱が逃げていくようで、
 リューリは離れていったアシュレの手を目で追いかける。




   「こちらでございます。」



 そう言われ、リューリは広間をあとにした。
< 7 / 159 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop