冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~

 一行は別荘についたが、問題がひとつもちあがっていた。

 別荘の台所の料理用ストーブが壊れていて、昼食の準備ができていない
 というのだ。



 「簡単なサンドイッチとワインなら準備できますが、、、。」



 そう言い、申し訳なさそうに体をすくめる、領主の家の家令に
 怒り心頭の領主は怒鳴りちらしているが、アシュレは屈託なく言った。



   「構わん、サンドイッチと飲み物をかごにいれてくれ。
    もう少し行ったところに、湖があっただろう、
    私はそこで食べる。」

   「それでしたら、使用人にテーブルを運ばせて、
    場をつくりましょう。」



 領主が揉み手をせんばかりにそう言うと、アシュレは一言で切って捨てた。



   「皆はここに残れ。私は一人で行く。」



 護衛の責任がありますと騎士がいっても、



   「こいつを連れて行く。なにかあればこいつを使いにやる。」



 そういって連れてきていた見事な鷹を、肩に止まらせた。

 踵を返そうとして、アシュレはリューリと目が合った。

 いつもは取り繕った顔をしているリューリが、心底羨ましそうな顔で
 アシュレをじっと見ていた。

 その顔を見たとたん、アシュレはよく考えもしないうちに口をひらいて
 いた。



   「お前も来るか?」

   「えっ」

   「皇妃はつれていく、食べ物を二人分たのむ。」
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