冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~

   「ところで、皇妃は見事な乗馬の腕だな。オニギスでは
    姫は乗馬をたしなむのか?」

   「いいえ、そのようなことは有りません、私が住んでいた
    北の離宮は不便なところで、生活のために必要だった
    のでございます。」

   「馬に乗らずとも、馬車はあるだろう。」

   「確かにありましたが、御者を働かせるよりは、自分が
    馬に乗っていったほうが、便利だし御者も助かります。」



 リューリの言葉を聞いたアシュレはきょとんとした。



   「御者が助かる?」
 
   「はい、だって御者は他にもいろんな仕事をこなさなければ
    ならないのですもの。」



 しごく真面目に答えるリューリを見て、アシュレは不思議な気分に
 なっていた。

 そういえば、城内に勤める者達と気安くしていると言ってなかったか。



   「皇帝妃は下々の者達と交わるのが好きか?」

   「はい、好きです。」



 アシュレの質問を聞いた、リューリの顔がぱあっと明るくなった。



 かわった姫だと思う。

 オニギスの人々は伝統を重んじ、身分差にきびしいと聞く。


 だが、目の前の皇妃からは、それとはまったく逆の事を感じる。
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