冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
「本当に良うございました。
皇帝陛下がそのように、おやさしい方で。」
リューリの髪を梳きながら、エルダは目元を潤ませながら微笑んだ。
その顔を見て、リューリも微笑む。
部屋に戻り、リューリはもう夜着にきがえていた。
アシュレの言うように、旅の疲れがとれないままの夜会で
思ったよりも疲れているようだ。
だから、早めに休む事にした。
小さなあくびをひとつ落とした時、
扉の向こうが騒がしくなり、突然、扉があいた。
何事かと振り向いたそこには、皇帝アシュレが立っていて、
その後ろに衛兵が戸惑ったような顔で、アシュレとリューリの顔を
見比べている。
「このような時間に、姫様のもとに、なんの先触れもなくお渡りとは、
如何な用件でこざいましょうか。」
唖然と突っ立ったままのリューリのとなりで、エルダがきちんと
礼をすると、顔をふせたままアシュレに問いかけた。