冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
「リューリ様、美しゅうございます。アシュレ様もお喜びに
なられましょう。」
エルダはそういうが、リューリはそんなことはないと思う。
(前の夜会の時には、ほとんど無視されていたもの)
案の定、出逢ったとたんにアシュレに目をそらされて、リューリは
内心、大きなため息をついた。
(ほらね、着飾る必要なんてないのよ)
アシュレはリューリを嫌って目をそらしたわけではなかった。
むしろその逆だ。
だが、そうしてしまった自分に動揺して、ますますリューリの方
を見れなくなった。
(ふう、息がつまるな、ただでさえ夜会は苦手なのに)
アシュレは襟元に手をあてた。
訳を知るものが側で見れば、ほほえましい二人のぎこちなさなのだが
二人にはそんなことはわからない。
そうこうしているうちに、扉がさっとひらかれた
夜会の始まりだ。