完璧男子の憂鬱。




入学式を終えると各クラスでHRが行われ、それが終われば新入生はもう解散ということになっているようだった。



俺は、HRの最中も、さっきのことが
頭を離れずにいた。




"良く見たら可愛くねぇ?"



どこの誰か分からない奴が言ったこの言葉を思い返し、あいつの姿を思い浮かべる。





……地味で暗いけど、別にブスじゃねぇよな。





ツヤのある長い黒髪も、傷みを知らない綺麗なストレートだ。


元々太らない体質なのか、食費を節約しているからなのか分からないが、もちろん太ってはいないし、むしろ普通より少しスラッとしている気さえする。


肌も日焼けをしている感じは全くなく、透き通るように白い。



顔はメガネ越しにしか見たことがないが、別に全然ブサイクではない。
……と思う。
メガネ越しだからよく分からない。





"なんか、エロくね?"





……なんて目であいつのこと見やがる。


また腹の底からフツフツと怒りが込み上げてきた。



あいつはな、暗いし、地味だし、貧相だし、何かと謎だけど、エロくはねぇだろう!




…と、ふいにあいつの顔が思い浮かぶ。


新入生代表あいさつをしている時。
原稿を見つめる目は伏し目がちになっていて、メガネ越しでも分かる長いまつげは小学生の時とは違う大人っぽさを感じた。

それに、原稿を読み上げる口。
小学生の時とは違う大人の女の声で話す。


時折、髪を耳にかける仕草なんかは……





そう思ったところでハッとなる。



いやいやいや、
何考えてんだよ俺!!



ありえない、ありえない。
あんな女なんかに色気を感じる訳がない!




中学では、口も利かなかったし、姿を見ることもほとんどなかった。
だから、久しぶりに見たあいつの姿にちょっと驚いてるだけだ!

だって、小学生から高校生だぞ?
そりゃ大人っぽく見えて当然だっつーの!




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