完璧男子の憂鬱。
塾と家庭教師を辞めてからというもの、
自分で予習・復習をするのが
毎日の日課となっている。
そのために学校の図書室はよく利用する。
今日もそのつもり。
高校ともなれば、中学の時より
広くて本の種類も多いんだろうなぁ。
本を読むのは好きだから、そうであって欲しいと願いながら歩く。
図書室に着き、ガラッと戸を開けると、
誰もいなかった。
やっぱり中学の時より広いし、
見た感じ本の数も多いように感じる。
貸し切りラッキー!
これで遅くまで集中して勉強できる!
夕日が差して気持ち良さそうな
一番奥にある席へ向かう。
と、さっきまで本棚で見えなかったが
先客が居た。
……あ、相沢!!
そこには相沢が座っていた。
…しかも、ちょっと寝てる。
起こそうかどうか迷ったけど
起こす理由も無いし、
何より家事で疲れてるのかもと思ったら
起こすのも気がひけた。
……ほんと、こいつ、俺のことなんか眼中にねぇよなぁ。
こいつが見ているのは前だけ。
いつだったか、中学のとき、
久しぶりに廊下ですれ違った相沢に
あいさつをしたのを思い出す。
「よぉ、相沢!久しぶりだな。」
俺はその時ちょうど女子達に囲まれてて、
モテモテなのを見せつけるようにして
ドヤ顔であいさつをした。
だけど、
「…………。
……あ、久柳。久しぶり。じゃ。」
こいつは俺の顔を見てから
思い出すのに時間がかかったようだった。
これだけ俺が毎日ライバル視しているのに
忘れてやがったのかと思うとめちゃくちゃ腹が立ったのをよく覚えてる。
……今でも思い出すと腹立ってきた。
でも、そのくらい、
こいつの目に俺は映ってなくて。
それがすげぇ悔しくて、
俺の心をかき乱す。
……いつかこいつに絶対勝って、
その目に俺を映させてやる。