完璧男子の憂鬱。
…………、
…なんだ、この状況は。
俺はあいつに招かれるまま、
家に入ってしまっている。
リビングというには程遠いような
狭い畳の部屋に座らされて、
あいつが淹れているお茶が出されるのを
じっと待っているという
なんとも変な状況。
……それにしても、狭いな。
俺ん家は特別豪邸だから
一般の民家がどんなものか良く分かんねぇけど、
普通の民家よりも狭いんだろうなって事は俺にも分かった。
やっぱ片親しか居ないっていうのは
大変なんだろうな。
ふと見ると、仏壇にはお父さんらしき人の写真が立てかけられてあった。
…優しそうな人だな。
「どうぞ。」
あいつがホカホカのお茶を俺の前に差し出す。
また、あのほのかなシャンプーの香りが鼻をすする。
………なに緊張してんだよ俺!!
気がついたら俺は正座していた。
あいつが、テーブルを挟んで俺の向い側に座り、正面で向き合う形になる。
物音一つしない、静かな空間の中で。
バクバク、
バクバクバク…
くそっ、
なんで心臓がうるせぇんだよ!
静かにしろよ、聞こえちまうだろ!