キャラメルに恋して
だけど、今は……今だけはそんな悲しい事を思い出したくなくて、首を振って考えを消した。
そして、隼人の話に全神経を集中させる。
「結構…年離れてんだ。今日は何でか遅いんだよな―…」
ブツブツとぼやく隼人の新たな一面を知れて、心が軽くなる。
隼人って家ではどんなふうなんだろう……とか、どんな子供だったんだろう……とか。
気になりだしたら仕方が無い。
「ねぇ隼人、私って隼人の事なんにも知らないね」
「まぁ…しょうがないじゃん、俺だって雛の事なんにも知らないし…。これから知ってけばいんだよ」
優しい口調でゆっくりとそう言われる。
滑の中を渦巻いている不安とか、寂しさのような冷たい氷が少しずつ溶けていっているよう……。
す――っ…っと軽くなった胸の中には、隼人を想う心しかなかった。
「隼人……、眠いかも」
安心すると、人間不思議なもので今日は絶対眠れないな……なんて思ってたのに、さっそく睡魔が襲ってきた。
「悲しいことは忘れて、寝た方がいいよ」
そのうち、優しい声がだんだんと遠くなり夢の世界へ落ちていった。
最後に聞こえたのは、「おやすみ……」という優しい声だった。