キャラメルに恋して
「ねぇ隼人……」
「んー」
「私………っ、やっぱなんでもない!!」
「は……、なんだよ?」
隼人の横顔を見ていて無意識に言葉を発しようとしてた、だけどその言葉の重さに気付き、とっさに口を噤んだ。
眉を寄せて、怪訝そうな表情をする隼人に気付かない振りして、歩くスピードをはやくした。
だって……、今言おうとした言葉、もし口に出してたら――――。
恥ずかしいのもあるんだけど、重いって思われたくない。
隼人に恋する前には、絶対になりたくないと思ってた女に、私はなっちゃいそうだ。
しばらく歩くと、隼人のマンションが見えてきた。
お別れの時が、刻一刻と近づいているのが苦しくて、胸をギュッっと掴まれたみたいな痛みが鈍く響いた。
無意識のうちに、歩幅を狭めている自分がいて……
無意識のうちに、スピードを落してる自分がいて……
無意識のうちに、隼人と手を繋ぎたいって思ってる自分がいる。
何も変わらないと思ってたのに、人は誰かに恋をするとこんなにも変わってきちゃう。