キャラメルに恋して
「だいまぁ〜」
海から少し歩いたところの白い洋風の家。それが私の住んでいる所。
「あら、おかえりなさい」
いつものように、ドアを開けると、珍しくお母さんが立っていた。
だけど、お母さんは仕事用のスーツに身を包み、頭のてっぺんから爪の先まだお洒落をしている。
「お母さん、今日仕事なの?」
お母さんは俗に言う、キャリアウーマン。
私が小さい時に、お父さんと離婚してからこの仕事を始めた。
そのお父さんは、もう死んじゃったけど、お母さんは女手一つで私を育ててくれている。
「そーなのよ。今日は取引先の方のパーティなの。遅くなるから、あとは自分でお願いねぇー」
――――…パタン
ドアが閉まる音が、部屋に寂しく響く。
この音が小さい頃から嫌いだった。この音を聞くたびに、一人なんだって実感していた
から……。
「はぁ……、また仕事か。久しぶりに会えたのにな」
実はお母さん、ほとんど家に帰らないの。
ビジネスホテルにずっと泊ってるらしい。
新しい男の人でもいるのかな…?
―――…パタ パタ パタ パタ
そんな事を一人寂しく玄関に突っ立って考えていると、突然、軽快なスリッパの音が聞こえてきた。
「雛ぁ〜?帰ってるの?」