キャラメルに恋して
「雛、ちょっとこれ見てよ」
「なぁに、アスちゃん」
どうも体調が優れなくて…というより、もう精神的に限界だったから、頭が痛い…というのを理由に早退した。
担任は案外あっさりとその嘘を信じてくれて、私は家に帰ることが出来た。
麻耶や響くんからは、疑いの眼差しを向けられたけど、2人とも何も言わなかった。
「これ、雛が小さい頃の写真」
「うわ~、なんか泣いてる?」
「そうそう、そういえばその写真を撮った時、雛ったら真菜の弟に苛められて泣いてんの」
「へー…って、真菜ちゃんに弟なんていたっけ」
クタクタになって家にたどりつくと、珍しいことにアスちゃんがいた。
どうやら今日は、大学が休みらしい。
元気がない私を心配したのか、本棚の1番奥から埃を被ったアルバムを出してきたのだ。
「これだから雛は……、たしか雛と同い年じゃなかったかなぁ」
「ふ~ん」
同い年と聞いても、真菜ちゃんの弟に何の関心も抱かなかった。
それどころか、少しだけ昔の記憶を思い出し、余計頭が痛くなる。
「そうだ、雛!!今日、皆で鍋パーティしよっか。真菜の弟も呼んで」
「え、えぇ!!」
「よし、決定☆大丈夫、材料はあるから」
「そんな問題じゃ…」
料理をつくるのは私なのに…そんな言葉は、胸につっかえたまま出てこなかった。
…体調悪いっていったのに。