キャラメルに恋して


それから、駅まで歩いて行って「じゃあ」という一言で分かれた。


その「じゃあ」…という言葉にはなんの感情もなくて、隼人は一回も私の顔を見ることなく……、一回も笑うことなく離れていった。



私も自分の家のほうへを歩き出したけど、「隼人が見ているかも…」そんな希望を胸に抱いて振り返った。



振り返った私の瞳に映ったのは、ラッシュですっかり込んでしまった駅前の人だかり。




その奥に、一瞬隼人の後姿が見えたようだったけど、それは気のせいだというように、消えていった。




その帰り道………いつもならハッキリ見える道が、今日は何故だかかすんでよく見えない。


ボーっとなった頭で考えるのは、やっぱり隼人の事。


本当に私を彼女と重ねてみていたのかな…?

とか…

隼人はどんな気持ちで観覧車の中にいたの?


とか……、聞きたい事は山ほどある。


だけど………、もう会うことはないんだよね?



そんな事を思いながら歩いていたんだけど……、さっきから道行く人の視線が痛いような気がする。



気のせいかな?


なんて思ったけど、どうやら気のせいではないらしい。





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