ゆーとゆーま
 おじさん達に、スズランを譲ろうかと訊かれたが断った。由布から渡さなくてもどうせゆーまの手に渡る、なんて自己中心的な理由じゃない。

 おじさん達からスズランを貰ったとしても、それは本当に自分からの花なのだと、胸を張ってゆーまにあげられない。そんなのはいや。だったらゆーまに誠心誠意謝って、そして非難されよう。

 おばさんに相合傘してもらった。

 由布が素直に甘えられたのはそのくらいだった。

 そのままゆーまに会いに行くのは叶わず、由布は一度自宅に戻ることになった。

 びっしょり濡れたベストもシャツも脱いで洗濯機に放り込み、シャワーを浴びて体を温める。頭を冷やすために水を頭からかぶって滝修行、もやれないことはなかったと思う。傘を差していなかった由布を見て、自分の体をいじめちゃダメだとおばさんに釘をさされさえしなければ。

 お湯は、心までは温めてくれなかった。


 私服でゆーまの家に行く時は、いくつか考えてた組み合わせのパターンから選ぶことが多い。可愛くて、かつ、おばさんに会うのを考えて肩の力を入れすぎてないの。あらまあオシャレしちゃって、とかおばさんに思われるのは気恥ずかしい。

 由布が一人でまるまる使っているクローゼットの一角には、そういう服が最初からセットで引っ掛けてある。
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