ゆーとゆーま
二人を繋ぐもの
 高校ともなると総合の時間なんてものはとっくにケーガイカしていて、木曜の七時間目にあるそれは、基本的に話し合うべき用事がなければ帰って良いことになっている。

 今日もすぐに帰れるだろうと由布はたかをくくっていた。実は昨夜はゆーまとメールをし過ぎてケータイの電池を使いすぎ、さらに充電せずに寝てしまった。結果、お昼には電池が切れていたのだ。これは早急にどうにかしなければならない。

 ゆーまからのメールに返信が遅れたら……考えただけで恐ろしくなる。

 だから由布は六時間目が終わるなりそそくさと荷物をまとめ、机の脇にかけていたお弁当バッグを引ったくり、急いで教室を出ようとした――が。


 ゆー? どこ行くの?


 壁を背中に密着させ、ドアのレールの上に放り出した長い足を置き、教室と廊下の行き来を塞ぐように立つその人は由布の手首を掴んで、

今日から合唱練があるんだよ。帰らないでね。

 と、悪びれずに笑って言った。そうだ、合唱コンクール。

 一拍置いて、周りの温度がさあっと下がったような気がしたのは由布だけだろうか。クラス中に沈黙が広がっていく様子は美依が発信源にも見えて、由布は思わず振り返った。
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