ゆーとゆーま
 そして今まであった限りの悲しいことを考えた。記憶が薄れていないため、思い出すのはそれほど難しくない。


 起きてよ、ゆーま。


 ちいさくつぶやいた。目の端から目薬だか涙だか分からない何かがこぼれて由布の頬を伝い、ゆーまの頬をぴしゃんと叩いた。

 ゆーまは起きなかった。こんな奴のために来なくったって良いのよ。おばさんに諭されてしまい、お仕事前のおじさんに由布ちゃんがキスしたら起きるかもと茶化され、由布はそうですねえ、と曖昧に答えた。

 自分がキスで王子さまの呪いを解く、おとぎ話のお姫さまなんかじゃないことはとうに知っている。
 けれど、由布の隣家通いはたぶん明日も、止まない。止められない。


TO:ゆーま だからとっとと起きろゆーま。
TO:ゆー  うわあ無理難題!
TO:ゆーま 放棄するな努力しろ。
TO:ゆー  だって仕方ないじゃん……。
TO:ゆーま みんなが愛想つかすのも時間の問題だからね。


TO:ゆー  ゆーだけは例外で、でしょ?


---

前提:ゆーまは眠り王子である。いや、男の子だし、白雪姫に出てくるねぼすけかも?

【了】
< 8 / 26 >

この作品をシェア

pagetop