月の花弁
俺は知ってる。寂しい時、傷ついた時、自分の体温だけじゃ、どんどん冷えていく。

「気にするな。俺は二歳の時ちゃんとアズサ様と、お前がユイ様から生まれてくるのを見たからな。」

そう言って手を綺麗な銀髪に乗せる。

正直振り払われると思ったが、ユリは目をそらせたまま、
心なしか一回の瞬きをすこし長くして

「ありがと」

と一言言った。

あまりにも素直だから思わず

「もしかして寝ぼけてる?」

「……それ、どういう意味?」

黄緑色の宝石が埋まっている綺麗に整った顔を少し歪める。

俺は笑って誤魔化す。

「はっきり言いなさいよ!」

< 21 / 169 >

この作品をシェア

pagetop