月の花弁
「ごめん、ごめん。」と言い合っていると
ユリがピクッと動いた。
「どうした?」
聞くと俺の後ろをじっと見つめて、
「見つかった。気づかない?」
という。その視線の先をたどってみるが、何も…
あ。50メートル先くらいに気配を消しもせず歩いてくる老人が一人。
気配を消してないとはいえ、良く気づくな。
ついさっきなんか、第一王子の俺が気配を消しているというのに見つけてたみたいだしな。
そんなことを考えていると、目の前に老人が来た。
またユリがピクッと動いた。またか。誰だよ。まぁ、今は俺に用がありそうな老人からだ。
そいつは初対面だというのに睨みつけてきたかと思うと
「こちらは群青の城の第一王女、ユリ姫様であるぞ。『ごめん』とはなんだ!失礼な。お前などがなぜ姫様と話している⁉︎」
…はぁ、めんどーだ。
「私は露草の城第一王子、ナオトだ。姫とは幼い頃からの付き合いであり、いわば幼馴染みである。ほかに何かあるか?今なら答えてやるが。」
「…………これはこれは。そうでございましたか…それは失礼。あなたがナオト王子…」
言葉は丁寧になったが、顔はもっと険しくなった。