キスより甘くささやいて
最近休日は、お家でのんびりが基本だ。
リビングの暖炉の前で(もちろん颯太の家には立派な暖炉がある。)、
炎が揺れるのを見ながら、ワインを飲んだり、
ブランケットに一緒にくるまって映画を見たり、
颯太の新作のケーキを一緒に作って食べたり、
高校生の頃に流行ったテレビゲームに熱中したり、飽きずに過ごす。

颯太は前にも増して、私をベットに連れ込む回数が増えた。
まあ、終わりが見えている(一時的にかも知れないけれど)って事は結構辛い事なので、
朝でも、昼でも、夕飯の支度の途中でも、颯太は私を抱き上げ、寝室に向かう。
私もいつも颯太を求めている。
確認するように抱き合い、唇を重ね、身体を繋げる。
いつも、行為の終わりに颯太は
『美咲と一緒にいたい。一緒にフランスに来て』とせつない声を出す。
私は涙が流れるのも構わず、笑って、首を横に振る。
ふたりとも一緒にいられない事は分かっている。
それでも、言わずにはいられない颯太の気持ちを思うと、
私は苦しく息が詰まりそうだ。
そんな風に、その年の冬は過ぎていった。
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