キスより甘くささやいて
やれやれとシルビアママは呟き、
私をいつものカウンター席に座らせる。
そして、私の隣に座り、
「颯太は、全然、美咲を手放すつもりはないわよ。」
とニッコリする。
哲也君がきれいな四角い箱を持ってくる。
シルビアママは箱を開けながら、
「颯太から預かってるの。」と言い、
颯太に返したつもりのエンゲージリングを取り出して、私の指にはめる。
「外すなって伝言。まだ、あるの。」と更に箱を取り出し、箱を開ける。私は思わず、
「マリッジリング?」と驚く。
「その通り。颯太も同じものをして、フランスに行ったわよ。」と鼻にシワを寄せ、
「なんで、私がこんな事、しなきゃならないのかしらね。」
と言いながら、私の左手をつかんで、薬指に指輪を押し込む。そして、
「美咲、これもあるの。」と婚姻届も取り出した。
私がサインするだけになっているその紙は、
証人欄にシルビアママの本名の山岸徹のサインとgâteauのオーナーの片岡さんのサインがされていた。
「はい、書いて。」とボールペンを渡される。
私があっけにとられていると、
「もう、颯太は3ヶ月前から、既婚者のつもりで生活してる。
日本に残してきた妻が心配だって、周りにも言ってるらしいし、
…呆れるわよね。でも、美咲は事実上、もう、颯太の妻よ。」とクスクス笑う。
私はまた、涙が頬を伝う。
「コラ、美咲、涙で汚す前に早くサインして。gâteauのオーナーはすごく喜んでくれたらしいわよ。美咲はオーナーの気持ちを無駄にするの?」とちょっと怖い顔で睨む。私は首を横に振る。観念して、自分のサインを書き入れた。で、でもちょっと待って、シルビアママが、封筒にしまっているけど、
「わ、私は颯太が帰ってきたら、役所に持って行きたい。」と言う。シルビアママは真っ直ぐに、私を見て、
「本当に?」と聞いてくる。
「颯太が、離れて暮らしても、いつ帰ってこれるか分からなくても、妻と思ってくれるなら、そう思われたい。でも、ヒトの心は変わっていくのを私は知っている。どう変わっていくか分からないけど、颯太が帰ってきた時に、私と、一緒にいたいって思ってくれたら、それを出しに行きたいの。」とシルビアママの金色の瞳を見つめる。
「美咲はその紙を出しておかなくても颯太を待つつもりなの?」と聞いてくる。
「私はすでに颯太のものだって、別れるずっと前に思ってた。2度と会えなくても、きっと、ずっと颯太を愛してる。」と俯いた。
「やれやれ。私と、哲也が今の言葉の証人よ。婚姻届は出してないけど、今から、美咲は颯太の妻よ。」と言って、哲也君に
「私達と同じね。役所に届けてなくても、私達自身に誓ってるところは一緒よ。私達は子どもも持てないけど、お互いを選んでいるから、それでいいのよね。」と哲也君の頬にキスをした。哲也君はそっとシルビアママを抱きしめる。素敵なカップルだ。
私は子どもを持つ可能性について、考えて、シルビアママにデリカシーがない態度だったなとちょっと反省する、私がシルビアママに謝ろうと声をかけると、
「いいの。美咲はポンポン子どもを産んで。私も一緒に子育てしたいから。まあ、そのオッパイじゃ、母乳は期待できないから、私がミルクをのませるわ。」とうっとり、出来てもいない子どもを子守する予定をたて出してうれしそうだ。思いついたように
「それには一刻も早く颯太にコンクールで優勝してもらって、ここに帰って来てもらわないと…」
と華やかに笑った。
私をいつものカウンター席に座らせる。
そして、私の隣に座り、
「颯太は、全然、美咲を手放すつもりはないわよ。」
とニッコリする。
哲也君がきれいな四角い箱を持ってくる。
シルビアママは箱を開けながら、
「颯太から預かってるの。」と言い、
颯太に返したつもりのエンゲージリングを取り出して、私の指にはめる。
「外すなって伝言。まだ、あるの。」と更に箱を取り出し、箱を開ける。私は思わず、
「マリッジリング?」と驚く。
「その通り。颯太も同じものをして、フランスに行ったわよ。」と鼻にシワを寄せ、
「なんで、私がこんな事、しなきゃならないのかしらね。」
と言いながら、私の左手をつかんで、薬指に指輪を押し込む。そして、
「美咲、これもあるの。」と婚姻届も取り出した。
私がサインするだけになっているその紙は、
証人欄にシルビアママの本名の山岸徹のサインとgâteauのオーナーの片岡さんのサインがされていた。
「はい、書いて。」とボールペンを渡される。
私があっけにとられていると、
「もう、颯太は3ヶ月前から、既婚者のつもりで生活してる。
日本に残してきた妻が心配だって、周りにも言ってるらしいし、
…呆れるわよね。でも、美咲は事実上、もう、颯太の妻よ。」とクスクス笑う。
私はまた、涙が頬を伝う。
「コラ、美咲、涙で汚す前に早くサインして。gâteauのオーナーはすごく喜んでくれたらしいわよ。美咲はオーナーの気持ちを無駄にするの?」とちょっと怖い顔で睨む。私は首を横に振る。観念して、自分のサインを書き入れた。で、でもちょっと待って、シルビアママが、封筒にしまっているけど、
「わ、私は颯太が帰ってきたら、役所に持って行きたい。」と言う。シルビアママは真っ直ぐに、私を見て、
「本当に?」と聞いてくる。
「颯太が、離れて暮らしても、いつ帰ってこれるか分からなくても、妻と思ってくれるなら、そう思われたい。でも、ヒトの心は変わっていくのを私は知っている。どう変わっていくか分からないけど、颯太が帰ってきた時に、私と、一緒にいたいって思ってくれたら、それを出しに行きたいの。」とシルビアママの金色の瞳を見つめる。
「美咲はその紙を出しておかなくても颯太を待つつもりなの?」と聞いてくる。
「私はすでに颯太のものだって、別れるずっと前に思ってた。2度と会えなくても、きっと、ずっと颯太を愛してる。」と俯いた。
「やれやれ。私と、哲也が今の言葉の証人よ。婚姻届は出してないけど、今から、美咲は颯太の妻よ。」と言って、哲也君に
「私達と同じね。役所に届けてなくても、私達自身に誓ってるところは一緒よ。私達は子どもも持てないけど、お互いを選んでいるから、それでいいのよね。」と哲也君の頬にキスをした。哲也君はそっとシルビアママを抱きしめる。素敵なカップルだ。
私は子どもを持つ可能性について、考えて、シルビアママにデリカシーがない態度だったなとちょっと反省する、私がシルビアママに謝ろうと声をかけると、
「いいの。美咲はポンポン子どもを産んで。私も一緒に子育てしたいから。まあ、そのオッパイじゃ、母乳は期待できないから、私がミルクをのませるわ。」とうっとり、出来てもいない子どもを子守する予定をたて出してうれしそうだ。思いついたように
「それには一刻も早く颯太にコンクールで優勝してもらって、ここに帰って来てもらわないと…」
と華やかに笑った。